もし、足が自由に動かず、ペダルを漕ぐことが出来なければ、自転車に乗るのを諦めるしかないのでしょうか? 艱難辛苦を乗り越えて、多くのバリアフリー自転車を作った堀田健一氏の姿を描いた本『風を切って走りたい! 夢をかなえるバリアフリー自転車』は、読んだ人の心にきっと、希望を与えてくれます。

一体どんな本なんでしょう?
目次
書籍名
風を切って走りたい! 夢をかなえるバリアフリー自転車
著者名
高橋うらら
出版社名
株式会社金の星社
ISBN
978-4-323-06096-5
出版社リンク
https://www.kinnohoshi.co.jp/search/info.php?isbn=9784323060965
備考
第66回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(全国学校図書館協議会/毎日新聞社主催)
本書は全七章で構成されており、導入部である第一章を除き、堀田健一氏の生涯における転機となるエピソードを時系列で辿ります。物語の中心は、バリアフリー自転車の開発ですが、それは単なる机上を作られた創作ではなく、現実社会の中で生きている一人の人間が経験した数々の出来事によって紡ぎ出されたものです。
堀田氏は、資金調達や社会的な壁、法的な問題など、様々な困難に直面しながらも、独自の道を切り開いていきます。本書では、そうした困難を乗り越える過程が、具体的なエピソードや登場人物との会話を通じて克明に描かれています。読者は、まるでその場に居合わせているかのように、堀田氏の生き様をリアルに感じることができるでしょう。
本書は、東京都でバリアフリー自転車を作り続ける堀田健一氏の波乱万丈な人生を、著者・高橋うらら氏が温かく描き出した一冊です。高橋氏は、数々のノンフィクション児童書を通じて、困難に立ち向かう人々の姿や、善意と希望の大切さを伝えてきました。本書においても、その豊かな表現力で、読者の心に深く語りかけてきます。
「東京都にバリアフリー自転車を作り続けている会社がある」という情報だけでは、私たちの想像力を掻き立てることは難しいかもしれません。しかし、本書は、具体的な数字やデータに頼るのではなく、一つひとつの場面を丹念に描写することで、読者を物語の世界へと引き込みます。堀田氏の若き日の衝動、バリアフリー自転車開発への情熱、そして周囲の人々との触れ合いなど、様々なエピソードが生き生きと描かれ、まるで映画を見ているような臨場感を与えてくれます。
特に印象的なのは、堀田氏の成功だけでなく、その裏側にある葛藤や悩みも克明に描かれている点です。彼は、私たちと同様に悩み、考え、成長していく一人の人間として描かれており、読者は自然と彼に共感し、応援したくなるでしょう。
また、本書は単なる人物伝にとどまらず、日本の社会変遷を背景に、バリアフリーという概念がどのように変化してきたかを浮き彫りにしています。自転車、バリアフリー、道路交通法といったキーワードを通して、読者は約60年の時をさかのぼり、過去の社会状況を想像することができます。
本書を読み終えた後、読者はきっと、堀田氏の情熱に心を打たれ、バリアフリー社会について深く考えるきっかけを得るでしょう。そして、困難な状況でも前向きに生きることの大切さを改めて認識するはずです。
読み進めるうちに、まるで小説を読んでいるような錯覚に陥るかもしれません。しかし、本書は紛れもないノンフィクションです。『堀田製作所』は実在し、バリアフリー自転車を作り続けている会社なのです。ウェブサイト(https://hotta-ss.com)を訪れて、その活動に触れてみると、活字を通して得た感動が、現実世界でさらに深まるはずです。そして、それはいつの日か、あなたの周りで善意と希望に繋がるかもしれません。